上級武士たちの屋敷跡が並ぶ北台武家屋敷通り。中でも酢屋の坂近くにある大原邸は、家老屋敷として、その暮らし向きや風情が今でも漂う貴重な建築遺産である。
見事な茅葺屋根、敷地面積656坪という広さの中には、美しい回遊式庭園が見られる。この他にも間口の広い玄関、次の間の存在、紋入りの畳の縁、弓天井、そして厠(かわや)。華やかであるどころかむしろ、質素で堅実、それでいて格式の高さが随所に見えるなど、ここが身分の高い家老宅であったことの証が建物の隅々に残されている。
そしてこの建物は、江戸時代の文化や武家社会の教養、人への気遣いといったものを感じたり、読み解くことができる空間でもある。さらには、物を大切にしたり、節約するといった数々の知恵が洗い場やかまどに見られるなど、今でも興味深い工夫が残っている。
大分県杵築市杵築207
9:00~17:00(入場は16:30まで)